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大樹の下で

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神話は過去のものとは限らない

私は久しぶりに表現しがたい感情に包まれる機会に恵まれた。
「充実感・高揚感」というべきか、
それとももっと簡単に「幸せに包まれた」
と表現すればよいだろうか。
それは、下に紹介する作品との出会いである。

軍犬と世界の痛み
(ハヤカワ文庫 SF ム 1-31 永遠の戦士フォン・ベック 1)

マイクル・ムアコック 佐伯経多&新間大悟 小尾 芙佐

4150116326
早川書房 2007-09-06
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この作品は小説である。
けして神話と呼ばれるものではないだろう。
ただし、私個人においてこの著者マイクル・ムアコック
永遠の戦士(エターナル・チャンピオン)シリーズ
まぎれもなく”神話”である。

このシリーズには著者独特の世界観独自の神々が存在する。

まずは、今回のこの邦訳について少し述べよう。

主人公ウルリッヒ・フォン・ベックは、
”軍犬”の異名を取る歩兵軍団長であった。
17世紀ヨーロッパにおける”三十年戦争”の時代に生きる。
新教徒(プロテスタント)と旧教徒(カソリック)の対立に端を発する
ヨーロッパの覇権争いは史実である。
中でもドイツ、マルデブルグの戦いは凄惨を極めたと伝えられる。
何しろ、3万人いた市民のうち、生き残ったのが5千人、
6分の5が残虐行為と略奪に巻き込まれて死んでいるのだ。

そして、物語はフォン・ベックがこの戦いに参加して
戦線から離脱したところから始まる。
彼は、不思議な城を訪れ、そこで、城主堕天使ルシファと契約、
伝説の聖遺物”聖杯”の探索に赴くことになるのである。
さて、内容は一見陳腐であると思われる方もいるかもしれない。
しかし、エターナル・チャンピオンのシリーズの昔からの読者である私には
読み始めた当初の違和感と読み終えての確信という矛盾する感情を
愉しませてもらった。

エターナル・チャンピオンのシリーズには他に、
「コルム」「エルリック」「エレコーゼ」「ホークムーン」などのシリーズがあり、
ヒロイック・ファンタジー(英雄幻想小説)と呼ばれるジャンルを確立した
多彩な統一した世界観の上にリンクする作品群である。

法と混沌の神々の戦いに巻き込まれる同一の魂の顕現である
永遠の戦士達の活躍を描く、剣と魔法のファンタジー、
それが、このシリーズの代名詞であった。

主人公は人間とは限らず、
世界も我々の住む世界とは違った歴史を持つ架空世界が
舞台となるのが常であったが、
このベックの作品は、史実を織り交ぜた我々の世界をベースに
著者独自の世界観(多次元宇宙)を控えめに散りばめて展開する。

それまでの作品とは異なり、
ルシファという有名な堕天使を登場させている事や
主人公がただの人間であり、魔法を派手に操ったり
モンスターを従えたりほとんどしない事は
他の作品を読んだ方の中には疑問を覚える方も
あるいは多いかもしれない。

しかし、この作品の示すものは、
他の異世界を構築しているからこそ生きていると私は感じた。
そして、私自身の中でこう確信するにいたった。
「あぁ、これは神話なのだ」と

彼の描く異世界は、ケルト・北欧の英雄神話をモチーフに用い、
その他の世界中の神話にリンクしながら、
独自の神々を生み出し、
この我々の世界に昇華したようである。

テーマは、神からの解放と人間の独立である。

その為、作品中のうち、多くを占める禅問答のような
主人公とその他の登場人物や神との対話は
実に奥深い。

主人公であるベックは受容する人である。

善や悪という価値観に左右されることなく
清濁併せ呑み、人が人以上でも人以下でもない世界を
垣間見せる役を担っているのだ。

最後に、登場する神名を散りばめておこうかと思う。
ルシファ(堕天使)
アリオッホ(悪魔の公爵)
リリス(?敢えてはてな)
そして、名を語られぬ神(唯一神・創造主)

現実を直視し、尚、行動し、理知を失わない事
他者に責任や義務を押しつけることなく、自身が立つ事。
それは、最も我々が必要とするものであると
考えさせられた。
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テーマ:神話 - ジャンル:学問・文化・芸術

2007-11-30 00:21:25

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