FC2ブログ

大樹の下で

神話・古史・古伝・民間伝承に関わる、自由な空想を不定期に更新しています。

2018-11

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- --:--:--

次記事へ移動する «  | HOME |   | ENTRANCE |  » 前記事へ移動する

地獄の女神は実は修道女!?~ヘル・ブリギッド~ゲルマンとケルト番外2

サンタクロースとなまはげの記事を間に挟みましたが
ゲルマンとケルト番外編の2をお送りします。
予告をしてから1年も間をおいてしまいましたが
北欧神話におけるロキとアングルボダの間に生まれたとされる
3人(頭?)の怪物の一人”ヘル”を焦点にしてみましょう。
もう一人対比したブリギッドについては後ほど

まずは、”ヘル”という女神の簡単な紹介から

:ヘル (Hel):
父:ロキ
母:アングルボダ
兄弟:フェンリル/ヨルムンガンド
支配地:ヘルヘイム(ニヴルヘイム)
住居:エーリューズニル

ロキと女巨人アングルボダの間に生まれた
世界に災厄をもたらすとされた3兄弟のうちの一人で女神とされ、
彼女だけが動物ではなく人型である。
(フェンリル:狼/ヨルムンガンド:蛇)
容姿は醜いとされ、上半身が生気のある肌色、下半身が腐敗し黒ずんでいるとされる。
絵画などでは白と黒(赤と青)に塗り分けられる。
これは、生と死の狭間にいる表現、あるいは、
生と死を支配する表現と考えられる。
北欧神話の神の中で唯一死者を蘇らせる力が見て取れる。
名誉ある死者(戦死者)以外の死者(病死・老衰・事故死など)が
行くとされる場所をオーディンから支配地として定められる。
文字通り地獄(英語のヘル)の女王である。
Wikipediaヘルの項参照

では空想の領域へと参りましょう(笑)
まずはタイトルの「地獄の女神は実は修道女!?」
このことをお話しましょう。

地獄の女神とは前述したヘルの事です。
ただ、このヘルという女神
初めにその記述を読んだときから、なんとも腑に落ちない部分があった。
まず、彼女が支配する死者の区分。
病死・老衰・事故死のように不名誉とされる死を迎えた者に限定されている。
北欧神話における名誉ある死者とは戦死者の事で
戦士の魂のみがエインヘリヤルとなるために
アースガルズ(アサ神族の国)のヴァルハラ(戦士の館)に招かれる。
ある意味、アースガルズを神の国とするならば
天国に行けるのは戦士だけということだ。
それ以外の死者は地獄行きなのである。
もちろん、地獄行きのルールは神にも適用されるもので
不慮の死を遂げるオーディンの息子で光の神バルドルも
兄弟のヘズによって事故死し、またそのヘズも
復讐により殺害されたとされるため
両者ともにヘルの元に行くことになる。
また、死者の他に悪人・悪事を働いたものもヘルに行くとされていて
このあたり、死んだ悪人なのか生きたまま地獄送りなのか
微妙な解釈ができたりもする。
色々考えてみるとどうやら本当の死者が行くと言うより
死に瀕した者が訪れるという感じがするのである。
つまるところ、
戦うことのできなくなった者
戦うことの出来ない者
不名誉を受けその不名誉を回復したい者
そういった者達が行く世界がヘルのいる場所ということだ。
で、あるならば、
ヘルの住む地は、地獄というより救済の場と言えないだろうか。

そういった発想の元にヘルという女神を眺めてみると
キリスト教における奉仕活動を行う修道女を連想してしまうのである。
病人を看護し、死を迎えようとするものに平穏を与え、
悪事を働いたものに懺悔を促し・・・・
ヘルの元へ行く者とピッタリ一致していないだろうか。

そのように考えると、彼女の容姿にかんする記述などにも
その片鱗が見え隠れしている。

上半身/下半身という表現もあるが
ただ単に半身が白、半身が黒 という表現もあるようで
これって、質素な色合いを制服とする修道衣に通じるように思うのだ。
修道女の制服の色は各宗派により異なるのだが
黒と白を身につけるのは定番と言っていい。

また、彼女が住む館エーリューズニルについての記述には
屋敷の垣根は驚くほど高く、門も大きい。
ヘルの使う皿はフング(空腹)という。
ナイフはスルト(飢え)という。
入り口の敷居はファランダ・フォラズ(落下の危険)という。
ベッドはケル(病床)、
ベッドのカーテンはブリーキンダ・ベル(輝く災い)という。
というものがあり、そのいくつかは
質素・清貧・看護を意味するように思うのだ。

さらに、ヘルという名前自体が、”隠れる”という意味なのだという。
修道士や修道女というものたちは
俗世を離れて辺境の地に隠れ住むような生活をする。

ヘルの父であるロキという神を
私は災いの種となりうる望まれぬ混血児や戦災孤児といった
社会から阻害された者たちの総称あるいは、その代表と考えた。
そのロキから生まれたとされるヘルが
当時の社会では不名誉とされる境遇の者たちに救済を与える女神というのは
これまた、しっくりと来るではないか。

さて、ここまで来てヘルが修道女であるとした場合問題となることがある。

果たして、北欧神話の成立時にキリスト教が存在したのか?ということだ。
それについては存在したと言って良さそうだ。

私は北欧神話に描かれている事が史実に則した
ある民族、部族、一族の記憶であると思っている。
北欧神話のような口承文芸にその原点を求める伝承は
年代の表記がまったくない為、
それがいつ頃起こったことを記録したものなのかはっきりしない。

だが、原典とされる「古エッダ」や「スノリのエッダ」、数々の「サガ」には
キリスト教化以降のものや、地中海世界でローマ帝国が出来上がる頃の話が多分に含まれ
かなり幅広い年代を通して伝承されていることがわかる。

北欧のキリスト教化はヨーロッパではかなり遅いとされているが
ローマ時代にかなりの範囲にキリスト教の布教があったことは事実で
それを無視できずローマは一時期キリスト教を迫害している。
イエスが磔になったのもローマの手によるのである。

ならば、ローマ時代に辺境とされた北欧地域に
俗世を離れて旅立った信者の一団がいて、なんの不思議もない。

ヘルの母とされるアングルボダという女巨人は
「鉄の森」に住むとされているのだが
実は、文字通り古高ドイツ語の Isen-Lôh (鉄の森)に由来する
イーザーローン(イゼルローン)という都市がドイツにある。
ローマ時代この地はガリア、あるいは、ゲルマーニアの境界あたりと思われる。
よって、アングルボダの住む「鉄の森」が
ドイツのイーザーローンのあたりであったならば
当然、キリスト教の布教があってもおかしくはない。

調べていくうちにますますヘル女神が修道女のような気がしてくる。

北欧社会の規範・規律を乱す教えをもって
社会的弱者の救済をした初期キリスト修道会を無視できなくなった
時のオーディンは彼らの体制批判をかわす為に
疎外者集団の代表者ロキを協議組織に加え
その組織の中に位置をしめた初期キリスト修道会の代表ヘルにも
その活動を限定的に認めたというのが
地獄の女神ヘルの誕生の真実ではなかろうか。

ずいぶんと長くなった(苦笑)
ここまで来てやっともう一人の女神ブリギッドの話である。
なぜここまで引っ張らないと出てこないのかといえば
ブリギッド女神というケルトの女神が
聖ブリギッドという伝説の聖女に繋がるからなのだ。

ブリギッド女神はアイルランドで古くから信仰のある女神で
火、金属細工、豊穣、家畜、作物の実り、そして詩の女神である。
ダーナ神族の有力神ダグザ(Dagda)の娘であり、
一説にはダーナの2代目の王ブレスの妻とされ
鍛冶の神ゴヴニュの母という伝承も存在する。
Wikipediaブリギッドの項参照

私はダーナの神々が北欧神話の神々と一部一致するのではないかと考えている。
その考えの中で、テュール(チュール)神がダーナの王ヌアザであると考えた。
詳しくは記事「隻腕の神テュール/ヌアザ ~ ゲルマンとケルト2」参照願いたい。
そもそもダーナ神族(トゥアハ・デ・ダナーン)とは”ダヌ女神の一族”という意味で
このダヌ女神、一説にはドナウ川の女神とされている。
北欧神話世界の支配範囲とゲルマンと呼ばれる民族の支配範囲から考えると
前述したイーザーローンもドナウより北に位置する場所で
ダーナの神々が住んでいた故郷に近いといえるかもしれない。
また、イーザーローンが金属加工のメッカであるというのだから
ブリギッドやゴブニュも繋がってくる。

上記ブリギッド女神と同一とされたアイルランドの守護聖人の一人が
聖ブリギッド(キルデアのブリギッド)という修道女だ。
Wilipediaキルデアのブリギッドの項参照
聖ブリギッド
この人が地獄の女神ヘルのモデルであるとは言えないが
こういった聖女が生まれる素養がアイルランドにはあり
この人が現れる以前から信仰自体は伝わっていることを考えると
当時の北欧社会制度上、救済という面では語ることができないヘルの側面が
その名の示す”隠れる””隠す”の意味も含めて
隠された伝承として残されたのかもしれない。

ヘルが登場する「バルドルの死」についても
ラグナロク(神々の黄昏)に繋がる逸話という事が
オーディン達の社会構造の崩壊の序曲として描かれており
ラグナロクの後にバルドルとその殺害者とされる盲目のヘズが
共に地獄から蘇るという伝承も
裏を返せば、キリスト教化への変遷を表現するものかもしれない。
スポンサーサイト

FC2 Blog Ranking 人気blogランキングへ ブログランキングくつろぐ にほんブログ村 歴史ブログ 神話・伝説へ

テーマ:神話 - ジャンル:学問・文化・芸術

2010-01-09 12:19:30

次記事へ移動する «  | HOME |   | ENTRANCE |  » 前記事へ移動する

コメント

勉強になりましたm(__)m

なるほど、確かにギリシャ神話でも地獄の王妃は春の女神だった、ペルセポネーでしたね。
そういう意味合いでも、共通項を感じます。
そういえば、老衰で死んだ者は戦士達とは別口でオーディンの下へと運ばれると聞きました。
一説には、長く生きたが故の知識を吸いとる為とか。
更には、農耕民はトールの下へ。
トールは、農耕の神様だと聞きましたが、その後運ばれた者達がどうなるのかは聞いてません。
が、トールの性格から考えると、あまり農奴とかは無さそうですね。
何にしても、面白い考察ありがとうございましたm(__)m

遅くなりました;;

WildChildさん、いつもありがとうございます。
お返事遅くなって申し訳ありません。

インボルグについてももう少し調べてみたいと考えてます。
実のところ、クロークールワッハとも繋がりそうなので
何か出てこないかと思っています(笑)

面白い取り合わせですね

ヘルとブリギットとは面白い取り合わせですね。
ヘルは現代ではめでたい死である老衰で死んだ人たちを迎える女神と言うことから考えると、聖女といえないでもないかな?
現代では、あまり良い死とはいえない海難事故死者はエーギルだし、戦死者はアース神族だしね。
(未開人にとって王が病気や老衰で死ぬことは魂が永遠に抜けてしまうことだったので、王を殺して王位を継承する儀式を行ったそうな。)(金枝篇)
聖ブリギットは、キリスト教の本当の聖女と言うよりは、聖人化された異教の女神だとかね。
ブリギットの祭りであるインボルグは、日本の旧暦の立春に当たりますね。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://taijyunoshitade.blog118.fc2.com/tb.php/54-af5d868a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

RSS表示パーツ

ブログメニュー 

translate this blog into

サイト内全記事表示

過去の全記事一覧を表示

サイト内キーワード検索

アンケート実施中!

好きな神話のアンケート実施中です!

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

カテゴリー

リンク

  • 趣味占放談
  • 光のシェラザード
  • 縄文と古代文明を探求しよう!
  • トーキング・マイノリティ
  • 民族学伝承ひろいあげ辞典
  • 管理者ページ

このブログをリンクに追加する

ブックマーク

プロフィール

かし りょう

Author:かし りょう
神話・古代史に思いを馳せる。
と言うと格好良いですが、実際は、
”空想にはお金がかからない”
という事で。。。
つたない知識のオンパレード。


大樹の下で<別館>
~ネタほん図書館~


くつろぐマイプロフィール

にほんブログ村 トラコミュ 昔話、伝承、神話へ
昔話、伝承、神話
にほんブログ村 トラコミュ 歴史好き (ジャンル不問)へ
歴史好き (ジャンル不問)

月別アーカイブ

日本神話関連書籍

ギリシャ・ローマ神話関連書籍

中近東神話関連書籍

インド神話関連書籍

中国・朝鮮神話関連書籍

ケルト・北欧神話関連書籍

中南米神話関連書籍

アフリカ神話関連書籍

RSSフィード

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。